偏愛

借りずに帰る日のほうが多い、という通い方

元教員のWさんは、二年前から週に三回、川沿いの図書館に通っている。二年間で借りたのは二十九冊。通った回数の九割は、何も借りていない。

窓際に長机が並ぶ図書館の閲覧室。木漏れ日が机の上に落ちている
Wさんが通う図書館の閲覧席。午前中は机に木漏れ日が落ちる。

週に三回、歩いて十二分

Wさんが通っている図書館は、川沿いにある。開架の閲覧席が窓に面していて、午前中は机に木漏れ日が落ちる。

二年前から週に三回通っている。家から歩いて十二分。開館の十分前に着くことが多い。

借りずに帰る

貸出カードの記録を見せてもらった。二年で借りたのは二十九冊。単純に割ると、通った回数のうち九割は何も借りていない。

「借りずに帰る日のほうが、多いです」

何をしているのか聞いた。棚を見て、気になった本を開いて、途中まで読んで戻す。それで二時間ほど経つという。

予定の入っていない時間

Wさんは元教員で、退職するまでの十数年は管理職だった。一日の予定が十五分単位で埋まっていた、と言う。

「予定が入っていない時間が、十何年なかったので」

退職した最初の年は、逆に何をしていいか分からなかったらしい。図書館に通い始めたのは二年目からで、きっかけは特にないという。

閲覧席は十六。Wさんは日によって違う席に座る。窓際が空いていれば窓際、埋まっていれば奥。常連の顔は覚えたが、話したことはない。

通い始め
2024年
頻度
週3回・午前
2年間の貸出
29冊
滞在時間
おおむね2時間

二年で二十九冊。Wさんは、それを少ないとは言わなかった。多いとも言わなかった。

週に三回、十二分歩いて、二時間いて、たいてい何も借りずに帰る。

書き手

石黒

編集長。ミハラシの創刊を担当している。

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べつの見方

持ち物との距離を、逆の方向から。

ブーム 読まなくなった本を、はじめてメルカリに出した。

日曜の便り

この取材で書けなかった話を、日曜に送ります。

元教員・Wさんへの取材では、記事に入りきらなかったやりとりがいくつかありました。そういうものを週に一度だけ送っています。

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