人生ストーリー

家を手放して、キャンピングカー生活を始めた夫婦

家を手放すかどうかで、二人は半年もめた。決め手になったのは将来の計算ではなく、庭の木の伐採見積もり十四万円だった。

キャンピングカーの車内の棚。三つの鍋と、並んだ文庫本。窓の外に湖が見える
車に積んでいるもののほぼ全部。鍋が三つと、文庫本。

半年、もめた

家を手放すかどうかで、二人は半年もめた。夫が先に言い出し、妻が反対した。話し合いは十回を超えている。

家は築二十八年の一戸建てで、ローンは終わっていた。売れば車と改造費が出る。計算上は成り立っていた。

決め手は、計算ではなかった

妻が折れたのは、庭の木を切る話が出たときだったという。手入れが追いつかず、伐採の見積もりを取った。十四万円だった。

「その十四万円で、どこか行けるよねって言われて」

夫のほうは、その場では何も言い返せなかったと言う。説得の材料を用意していたのに、使わずに終わった。

持っていったもの、置いていったもの

車に積めるのは、二人ぶんの衣類と、鍋が三つと、本が二十冊ほど。それ以外は処分した。

最後まで迷ったのは食器だった。三十年使った皿を八枚、知人に譲っている。譲り先を探すのに二か月かかった。

「捨てるのは十分でできるんです。渡すほうが時間がかかる」

いまは、月に六か所

移動は月に五回から六回。一か所に四日から六日いる。滞在先は道の駅やキャンプ場で、二週間に一度は同じ温泉に寄る。

不便なことを聞くと、洗濯と、郵便物と、歯医者、と即答があった。順番も決まっているらしい。

始めた時期
2年前
話し合った期間
約6か月
持っていったもの
衣類・鍋3つ・本20冊ほど
移動
月5〜6か所/1か所に4〜6日

家を売った金額も、車の値段も、二人は明かさなかった。かわりに何度も出てきたのは、庭の木の伐採見積もり十四万円のほうだった。

決めたのは計算ではなかった、と二人とも言っている。

書き手

石黒

編集長。ミハラシの創刊を担当している。

石黒自身の偏愛:26年使っている革の名刺入れ

べつの見方

予定の入っていない時間をつくった、もう一人の話。

偏愛 借りずに帰る日のほうが多い、という通い方

日曜の便り

この取材で書けなかった話を、日曜に送ります。

記事に入りきらなかったやりとりや、途中でやめた企画のことを、週に一度だけ送っています。

LINEで受け取る

いつでも解除できます。

人生ストーリーのほかの記事