遠出

ひとりで泊まれる宿を、37軒に断られた。

二泊三日、ひとりで行くつもりだった。三十八軒に問い合わせて、三十七軒に断られた。宿を責める話ではない。数えた記録として書く。

四畳半の和室に、布団が一組だけ敷かれている
三十八軒目。四畳半に、一組だけ。

三十八軒に問い合わせた

行き先は決めていた。十一月の平日、二泊三日。人数は一名。この条件で、予約サイトと電話で三十八軒にあたった。

かかった時間は、六時間二十分。三日に分けて調べた。

断られたのは三十七軒だった。

断り方の内訳

断り方は、大きく三つに分かれた。

いちばん多かったのが「一名様はお受けしておりません」で、二十四軒。理由の説明はないことがほとんどだった。

次が「平日のみ、または直前であればお受けできます」で、九軒。今回は平日なので、条件としては合っている。ただし、そのうち六軒はすでに満室だった。

残る四軒は「二名様の料金でよろしければ」。一泊一万九千八百円。ひとりで泊まって、二人分を払う形になる。

「申し訳ありません。うちは二名様からなんです」

この言い方を、十回以上聞いた。声はどこも丁寧だった。

宿が悪いという話ではない

調べているうちに分かったのは、多くの宿が二人で来る客に合わせてできている、ということだった。

部屋の広さも、食事の出し方も、風呂の時間の割り振りも、二人を単位にすると効率がいい。ひとりを受けると、部屋あたりの売上が半分になる。断るのは経営判断であって、感情の話ではない。

それは分かる。分かったうえで、三十七回断られた。

三十八軒目

泊まれたのは、駅から歩いて十二分の素泊まりの宿だった。一泊七千七百円。部屋は四畳半で、窓の外は隣家の壁だった。

電話で「おひとりですか」と聞かれ、そうですと答えたら、「はい」とだけ返ってきた。それで予約が取れた。

布団は一組だけ敷いてあった。二泊とも、同じ位置に敷いてあった。

条件
11月の平日・2泊3日・1名
問い合わせ
38軒(予約サイト26/電話12)
断られた
37軒
内訳
一名不可 24/条件付き可だが満室ほか 9/二名料金なら可 4
調べた時間
6時間20分(3日に分けて)
泊まった宿
素泊まり 7,700円・四畳半

次に遠出をするときも、また同じように探すことになる。三十八軒目が見つかるとはかぎらない。

それでも、ひとりで行くつもりでいる。

書き手

平島

編集者。台所と道具まわりの取材が多い。

平島自身の偏愛:17年使っている土鍋

べつの見方

十一年、同じ宿に泊まり続けている人がいる。

遠出 11年、同じ宿の同じ部屋に泊まっている。

日曜の便り

断られた三十七軒の、電話のやりとりを送ります。

記事に入れなかったやりとりと、その後に見つけた宿のことを、週に一度だけ送っています。

LINEで受け取る

いつでも解除できます。

遠出のほかの記事