偏愛

14年おなじ場所に置いている、猫の水入れ

元・書道教室主宰のAさんの家に、白い水入れがある。使っている猫は二匹目。器のほうは、十四年替えていない。

板の間の柱のわきに置かれた、白い陶器の水入れ。ふちに細かい貫入が入っている
柱から二十センチ。十四年、この位置から動いていない。

猫は二匹目、器は一つ目

白い陶器の水入れが、板の間の柱のわきに置いてある。直径十四センチ、高さ五センチほど。ふちに細かい貫入が入っていて、内側の底に薄く輪の跡がある。

十四年前、一匹目の猫を引き取ったときに買ったものだ。その猫は四年前にいなくなった。いまいるのは二匹目で、去年から一緒にいる。

「新しい子には新しいものを、とは思わなかったんです」

置く場所は、猫が決めた

柱から二十センチ。台所の入口が見えて、廊下の音も聞こえる位置だという。ここに落ち着くまでに、一匹目のときは四回動かした。

「うちの中で、あの子がいちばん長くいた場所です」

二匹目が来たとき、Aさんはいったん別の場所に置いてみた。三日で、二匹目のほうが器を元の位置まで押していったという。

「偶然だとは思います。思いますけど、それからは動かしていません」

洗うのは、朝の一回

水を替えるのは一日に二回。器を洗うのは朝の一回だけと決めている。スポンジは食器と分けていて、洗剤は使わない。

十四年で欠けたのは一か所。五年目に、掃除機の柄をぶつけた。ふちが五ミリほど欠けて、そのままにしてある。

「金継ぎも考えたんですけど、水を入れるものなので」

同じ器がまだ売られているかを調べたことはあるかと聞いた。ある、という答えだった。二千二百円で、いまも同じ窯がつくっている。買っていない。

買った年
2012年
使った猫
2匹(1匹目 10年/2匹目 1年)
置き場所
板の間、柱から20cm。14年不動
欠け
1か所(5年目・約5mm・未修理)
洗い方
朝1回。洗剤は使わない

取材の途中で、二匹目が水を飲みに来た。三口だけ飲んで、行ってしまった。

Aさんは「少ないんです、この子は」と言って、水の量を目で測っていた。

書き手

鈴木

編集者。人と暮らしの取材を担当。

鈴木自身の偏愛:11年替えていない目覚まし時計

べつの見方

ものを減らそうとして、数えることになった話。

ブーム 一年かけて家のものを数えたら、3,412点あった。

日曜の便り

この取材で書けなかった話を、日曜に送ります。

Aさんへの取材では、記事に入りきらなかったやりとりがいくつかありました。そういうものを週に一度だけ送っています。

LINEで受け取る

いつでも解除できます。

偏愛のほかの記事